Saturday, September 08, 2007

プライバシーの保護と知る権利

プライバシーの保護と知る権利 英仏の流儀の違い

 フランスの最大野党、社会党の指導者と恋人とのツーショットを掲載した仏週刊誌の出版元が最近、プライバシーの侵害で約240万円もの罰金の支払いを命じられた。ドーバー海峡をひとつ越えた英国での王室報道を考えると、この裁き、厳し過ぎる感は否めない。公人、有名人のプライバシーの保護と国民の知る権利との兼ね合いをめぐる英仏間格差を探った。(パリ 山口昌子、ロンドン 木村正人)
 問題の写真は、旧仏植民地モロッコの浜辺で休暇を過ごしている社会党のオランド第1書記と、お相手の週刊誌「パリ・マッチ」の女性記者の姿を盗撮したものだった。
 オランド氏と、先の大統領選に社会党候補として出馬し落選したロワイヤル氏は、4児をもうけるなど実質的な夫婦関係にあり、選挙後に正式に“離婚”を公表。オランド氏が選挙戦さなかにこの女性記者と親しくなったためと伝えられていた。
 ふたりのバカンス・シーンは格好の特ダネ写真だったといっていい。仏大衆週刊誌「クロゼ」は通常の発売日を3日繰り上げて、スクープ写真を載せ、通常よりも約10万部多い約80万部を印刷する熱の入れようだった。
 だが、パリ郊外ナンテールの大審裁判所は8月28日、発禁請求は退けたものの、この女性の私生活を侵害したとして、出版元に対し1万5000ユーロ(約240万円)の罰金を支払うよう命じた。
 判決の根拠となったのはフランスの民法第9条で、「各自は私生活を尊重する権利がある」とプライバシーの保護を明確にうたっているからだ。同国では、プライバシーの侵害で罰金刑を科されるのはそう珍しくない。
 一方、英国では、1990年代にチャールズ皇太子とダイアナ妃との不仲から別居、離婚へと至る過程で大衆紙を中心に展開されたすさまじいまでの暴露報道合戦はまだ記憶に新しいところだ。その果てに、離婚後のダイアナ元妃がパリで「パパラッチ」と呼ばれる一発屋のフリーカメラマンたちの追跡を逃れようとして交通事故死する、97年の悲劇が起きた。
 この1月にも皇太子周辺で電話を盗聴、さすがにこれは犯罪だったから大衆紙編集者らが禁固刑を受けたが、王室報道の過熱は相変わらずだ。
 ロンドンのロッチマン・ランダウ法律事務所の中田浩一郎弁護士によると、英国でも情報保護法や通信保護法に絡む裁判の判例により、プライバシーは保護されている。
 だが、フランスでは男女の不倫などには概して寛容であるのに対し、英国をはじめアングロサクソン社会では、例えばセックス・スキャンダルが政治家の命取りになるように、伝統的に著名人、特に公人の私生活には厳しい目が向けられる。両国の懸隔には文化や慣習の違いも大きいという。
 加えて、王室報道などが過剰に陥るたびに、プライバシー保護法の制定が叫ばれながら、国民の知る権利を損ないかねないとの反論が上がり、結論は出ないまま、賛否両論が延々と続いている。
 代わって、新聞、雑誌の取材で不利益を受けた一般市民が不服を申し立てられる「報道苦情委員会」(マスコミ関係者らで構成される独立の組織)が活用されてきた。
 最近では、ウィリアム王子の恋人、ケイト・ミドルトンさんが、「パパラッチ」に撮影された写真はマスコミが作成した行動規定の「ハラスメント」に当たるとして、訴え出たケースがある。その結果、元妃の悲劇を繰り返すまいと、タイムズ紙や大衆紙サンを傘下に置くニューズ・インターナショナルが写真の不掲載に踏み切っている。
 こんな時間をかけたやり方も、プライバシーの保護と知る権利との間でバランスを取る英国流の知恵なのかもしれない。
 by 産経新聞
  すごいパパラッチだよねぇ。おかしいよっ。

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